専務 駒瀬 貴臣
専務という立場になって私はどんなグループホームを目指したいのだろうと改めて考えてみた。
私は、利用者様も、ご家族様も、スタッフも皆が笑顔でいられるグループホームを作りたい。
そのためには利用者様には質の高い介護を、ご家族様には関係が崩れないような支援を、スタッフには働きやすい環境を提供できなければいけないと思っている。
私が考える質の高い介護とは、利用者様が主体性を持って生活できるように支援する介護である。
利用者様が得意なことや出来る事を見つけ、それを役割として担ってもらう。
食事を担当する当番や掃除を担当する当番はもちろん、力仕事は昔大工だった男性に、テーブルクロスを作るのは昔縫製工場で働いていた女性がやると良いかもしれない。そういう役割をもって利用者様が主体性を失わないようなグループホームにしていきたい。
職員がすることは、そのお手伝いや調整だけ。「だけ」と言ってもそこが難しい。
認知症の方の特性を理解して、知識や技術を磨いてなお、思い通りに行かない事も多い。
介護は誰にでもできると言われることがあるが、決してそんな事はなく、特に認知症介護は誰にでもできる仕事ではないと断言できる。
だからこそ職員は誇りをもって、仕事してほしい。職員が主導してしまうのではなく、利用者ができないことだけ手伝わせてもらう。それが介護において最も重要である「自立支援」だと思っている。
認知症介護の実践には職員の質が求められる。
だからすずらんでは、未経験の方でも認知症介護のプロになれるよう一から指導する準備がある。人を育てるのも会社の使命だと考えているから。
人を育てるための研修は、職員が前向きに取り組めるものではないといけない。だから職員の意見もどんどん取り入れていく。
先日あるスタッフから「こんな研修がしてみたい」という意見が出た。一日利用者になってホームで生活してもらう利用者体験研修だ。
無言でやられる介助の居心地の悪さや濡れたオムツの不快さ、1日やることもなくどこにも行けずボーとしていることのつまらなさ、逆に丁寧な介護の安心感、否定せず受け入れてくれる人がいることの幸福感、そういったものを実体験として感じてもらい、今後のケアに活かしてもらう良い研修が導入できたと思う。
私がはじめて介護の世界に入った15年前、100人の利用者がいる大きな特別養護老人ホームに配属された。当時は、介護の仕事をあまり楽しいとは思っていなかった。
なぜ楽しいと思えなかったか?
今考えると、はっきりわかる。ただの歯車だったからだ。シフトを回すただの一員。業務は流れ作業で、思い描いていた理想の介護とは程遠かった。もちろんその会社が悪いのではない。声を上げられなかった力のない自分のせいだ。
でも会社の規模が大きいとその声を上げるのもなかなか難しい。だから私は、一人ひとりの個性を大事にする、主体性をもって働けるような「しくみ」を作りたいと考えている。
その第一歩が「使途自由金」。
職員だけで使い道を決められる自由なお金を毎月準備する。利用者のレク用品、業務効率化のための物品、休憩室のお菓子、職員の結婚祝いなど。
職員の「あれをしたい、これをやってみたい」を少しずつでも形にしてあげたい。
まだ始めたばかり。いろんな使い道をしてくれる事を期待している。定形化しないといいなと思う。
最後にすずらんの運営理念を紹介したい。
「大切なあの人が、いつも笑っていられるように」
「大切なあの人」とは、利用者様であり、ご家族であり、スタッフである。
皆がそれぞれ誰かの「大切なあの人」であることを忘れずにお互いを尊重し、認め合い、支え合える環境を作っていきたい。
そういう環境が整っているからこそ、ケアの質や利用者様の満足度、ご家族との関係性やスタッフの働きやすさが相乗効果で高まっていくと信じている。
だから私は「大切なあの人がいつも笑っていられる」、そんなグループホームを目指し続けたい。